星医会 東海大学医学部同窓会
 
 会報(第32号)
 〜平成17年3月1日発行〜


東海大学病院で緩和ケアを
田仲 曜(10期生)

 がんで亡くなる方は年間30万人といわれており,治癒する方を含むと年間60万人を越えるともいわれています.卒業後三富利夫初代教授の旧第二外科で勉強させていただき,幕内博康現教授のもとで食道癌の診断,内視鏡治療,手術を学ばせていただいていました.外科の歴史は平成に入ってから大きく変化し,内視鏡手術,縮小手術など目覚ましい発展を遂げました.これらのことを学ぶと同時に多くの終末期患者さんを拝見させていただき,外科医の片手間で本当の終末期医療は出来ないことに気付いていました.東海大学病院では,がん性疼痛の治療に興味を持って診療している医師や,がん性疼痛看護認定看護師などがたくさんいるのに,なぜその力が分散したままになっているのかが非常に不思議に感じていました.2003年5月に江口研二教授(オンコロジーセンターセンター長)を委員長として,東海大学緩和医療委員会を幕内病院長命で立ち上げました.委員会として準備を重ねて,2003年10月から緩和ケアチームとして診療を開始しました.
 緩和ケアチームは主治医から依頼を受けて,主治医と一緒に緩和ケアを行うコンサルテーション型のチームです.緩和ケアチームの緩和ケア病棟(ホスピス)と大きな違いは,終末期の患者さんという限定のないことです.したがって亡くなっていく患者さんばかりでなく,疼痛管理を行って退院される患者さんも多くいらっしゃいます.身体症状の緩和を担当する緩和ケア医,精神的症状の緩和を行う精神科医,がん緩和の教育を受けた専従看護師が中心的なメンバーとなります.東海大学病院ではこれに麻酔科医,ソーシャルワーカー,在宅医療室看護師,栄養士,薬剤師,健康科学部の学生ボランティアなど多くの人材が関わって緩和ケアを行っているのが特徴です.開始当初はなかなか依頼が増えませんでしたが,現在では7-10症例ほどを常時拝見させていただいています.
 がんの患者さんの症状には,身体的な苦痛,精神的な苦痛,社会的な苦痛,スピリチュアルペイン(霊的な苦痛)があるといわれています.身体的な苦痛には,がん性疼痛,食欲不振,悪心嘔吐,下痢,便秘,腹水胸水,呼吸困難,むくみなどがあります.最近,がん性疼痛に対してはモルヒネ以外にもフェンタニールやオキシコドンなどの麻薬が使用出来るようになり,また鎮痛補助薬などにより比較的コントロール出来るようになりました.精神的な苦痛は,うつ,適応障害だけでなく,せん妄などがよく問題になります.社会的な苦痛は,家族のこと,仕事のこと,お金の問題などさまざまあり,なかなか主治医の先生には話せない患者さんもいらっしゃいます.スピリチュアルペインは自分がこんな不幸を味わうのかなど,自分の存在や価値,人生観などについて悩んでしまうことをいいます.これらはお互いに複雑にからみあって存在し,治療する上でどれも重要視して解決に当っています.
 昭和大学北部病院高宮有介先生から,今年の大学病院の緩和ケアを考える会総会・研究会の当番世話人をするように命じられました.2005年6月4日土曜日に伊勢原文化会館大ホールで第11回となる総会研究会を行います.近年では400名の医師・看護師・コメディカルが参加します.緩和ケアにおけるコラボレーションというテーマで,二つのワークショップを行う予定です.昼には健康科学部の松本雅之先生が「ホスピタルアート」の講演をされます.http://kanwa.med.u-tokai.ac.jp/の緩和ケアチームのHPからリンクを貼り順次情報を公開していく予定です.
 東海大学病院での緩和ケアチームによる診療は,まだ産声を上げたばかりです.私の緩和ケア医としての経験も,まだまだ未熟ではあります.しかしながら,一歩一歩確実に緩和ケアの普及,定着に努めていく所存であります.皆様方の暖かい叱咤激励をよろしくお願いいたします.


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