星医会 東海大学医学部同窓会
 
 会報(第33号)
 〜平成17年9月1日発行〜


第11回星医会賞決定!!


 本年3月13日、星医会総会において星医会賞の表彰が行われました。
 星医会賞も本年で第11回を数えます。これまで激戦を勝ち抜いて受賞されてきた先生方のご活躍が聞こえてくる中、今年も素晴らしい研究があがってきました。
 応募論文は5編。最終的に2編に絞られたものの、そこから難航いたしました。協議を重ねた結果、栄誉は“東海大学医学部内科学系 腎内分泌代謝内科所属”17期生の豊田雅夫先生が手にされました。豊田先生、おめでとうございます。
 論文表題は“High expression of PKC−MAPK pathway mRNAs correlates with glomerular lesions in human diabetic nephropathy”です。
 そして、上記受賞論文と最後まで覇を競ったのが、“大津赤十字病院眼科所属”19期生の雨宮かおり先生。まさに僅差の上に僅差の次点でした。論文表題は“Adult human retinal pigment epithelial cells capable of differentiating into neurons”雨宮かおり先生には、激戦審査の余韻を残し、満場の推挙を受けて星医会奨励賞が授与されました。本賞受賞を逃されたとはいえ、素晴らしい研究です。雨宮先生おめでとうございます。
 最後に、残念ながら受賞には至りませんでしたが今回ご応募いただきました先生方、ご尽力、ご協力いただいた皆様方に心より御礼申し上げます。
 今号に豊田雅夫先生、雨宮かおり先生の受賞論文の要旨を掲載しております。ぜひご精読ください。
 今年も既に、豊田先生、雨宮先生に続く卒後10年未満の若手研究諸氏の成果を募集受付しております。もちろん、学外からのご応募も大歓迎です。
 高質の研究成果で賑わう星医会賞を期待しております。
星医会賞担当理事 今岡千栄美



第11回星医会賞

ヒト糖尿病性腎症におけるPKC-MAPK pathwayの関与の検討
豊田 雅夫(17期生)

 【背景】
本邦における新規血液透析導入患者数は増加の一途をたどっており、なかでも糖尿病性腎症が透析導入原因の第一位となったことからも、糖尿病性腎症の発症進展のメカニズムの解明は急務であるといえる。ヒト糖尿病のような高血糖環境下での腎糸球体内の細胞ではPKCに代表される細胞内シグナル伝達経路が活性化され、その活性化シグナルによりTGF-bなどの発現を亢進させることとなり、糖尿病性腎症を招いているのではないかと考えられている。しかしながら、現在まで、PKCに代表される細胞内シグナル伝達と糖尿病合併症の発生に関する研究は、主として糖尿病実験動物モデルや培養細胞などを用いたものが多く、ヒトの糖尿病性腎症の腎組織を用いて詳細に検討したものは無かった。そこで今回我々は、ヒト糖尿病性腎症腎組織を研究材料とし、PKC-MAPK pathwayに属するPKC b1、MEK1、MEK2、ERK1、ERK2発現の程度を検討した。
 【対象および方法】
非放射性in situ hybridizationは以下の要領で実施した。使用するプローブの核酸配列はヒトPKC b1、EK1、MEK2、ERK1、ERK2、TGF-b1 mRNAからアンチセンスプローブを作成した。
対象組織は腎生検によって得られた新鮮凍結標本を対象組織とし、腎組織障害の程度で3群に分けてそれぞれ比較検討した。それらの腎組織をクリオスタットで薄切し、4% paraformaldehydeで固定後、HClとproteinase Kにて除蛋白を行い、プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーションを行なった。その後、mouse 抗DIG抗体、HRP標識rabbit抗mouse抗体、HRP標識swine抗rabbit抗体を用いて免疫組織染色した。また、MEK、ERKに関しては抗体を用いて蛋白レベルでのリン酸化も検討した。
 【結果】
PKC-MAPK pathway mRNAの腎糸球体内での発現局在はいずれも糸球体メサンギウム細胞、糸球体上皮細胞に主に発現が確認され、一部のボウマン嚢上皮細胞にも発現していることがperiodic acid Schiff (PAS)染色による二重染色法にて明らかとなった。mRNA陽性率はいずれも軽度障害群で重度障害群や正常腎組織に比べ有意に高値を示していることが確認された。また、PKC b1、MEK1、MEK2、ERK1、ERK2のmRNA陽性率の相関の有無を検討したところ、それぞれ有意な正の相関を示していることが確認された。このことから、PKC b1、MEK1、MEK2、ERK1、ERK2は糖尿病性腎症の軽度腎組織障害の時期に発現が亢進しており、初期腎病変との関連が強く示唆された。また、抗体を用いた蛋白レベルでの検討でも同様の結果であった。
 【考察】
今回の結果からPKC-MAPK pathwayの亢進がヒトの糖尿病性腎症腎障害の発症進展に深く関与している可能性が示唆された。今後、これらの制御系に関する検討が必要と考えられた。




星医会奨励賞

若年ヒト由来網膜色素上皮細胞の神経細胞への分化転換能
雨宮 かおり(19期生)

【目的】イモリやラット等の網膜色素上皮細胞には水晶体細胞や網膜神経細胞への分化転換能があることが知られている。今回、我々は成体ヒト網膜色素上皮細胞における神経分化能の有無について調べた。
【方法】19歳ヒトの眼球から摘出、分離培養され株化された網膜色素上皮細胞株(ARPE-19)を用いた。ARPE-19をウシ血清をくわえた培養液で増殖させ、数回継代した後、神経幹細胞の培養条件、すなわち線維芽細胞成長因子および上皮細胞成長因子をくわえた無血清培地で培養を行った。その後、培地から成長因子を除きレチノイン酸を加え分化を誘導した。分化誘導前後の細胞の性質を確認するため、免疫組織化学法を行った。1次抗体には抗βVtubulin抗体、抗MAP5抗体、抗NF200抗体、抗GFAP抗体、抗rhodopsin抗体を使用した。
【結果】血清入り培地下では細胞は多角形で平坦な上皮様の形態を保っていたが、神経幹細胞の培養条件に移すと、数日後から徐々に突起をもった形態に変化した。レチノイン酸による分化誘導により、MAP5、NF200陽性細胞の出現を認めた。GFAP、RET-P1陽性細胞はみられなかった。βVtubulinは分化誘導前後とも大部分の細胞で陽性で変化はなかった。
【結論】成体ヒトの網膜色素上皮細胞においても、神経幹細胞の培養条件で神経前駆細胞様の性質を持ち、さらにレチノイン酸による分化誘導を行うことにより、神経細胞へ分化転換が可能であると考えられた。ただし、この条件ではグリア細胞や視細胞への分化は困難であった。




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