星医会 東海大学医学部同窓会
 
 会報(第37号)
 〜平成19年9月1日発行〜


特集1

東海大学医学部における医師国家試験への取り組み
医師国家試験対策委員会 委員長
基礎診療学系画像診断学 教授  今井 裕


 2007年2月に施行された第101回医師国家試験における本校の成績結果は、新卒97%と高い合格率を達成することができました。これらは、すべて学生諸君の努力の結果であると同時に、金渕会長をはじめとする星医会ならびに竹田会長をはじめとする医学振興会の皆様の多大なるご支援のお陰であり、心から御礼申し上げます。
 私は2年前の2005年4月より、本校の医師国家試験対策委員会を担当することになりました。その時から学生諸君、とくに学生の医師国家試験対策委員や期生会の諸君とは何度も本校における医師国家試験対策のあり方について議論し、彼らと一緒に国試対策の改革を実行してきました。以下に、これまでの経験から学んだことを項目ごとに述べたいと思います。
1. 2005年当時の学生達の不満とそれに対する対策
a) 総合試験準備問題集の改訂
 当初、学生諸君は総合試験ならびに大学に対して強い不満を抱いていました。それは、大学で作成している「総合試験準備問題集」や「総合試験」そのものの勉強は必ずしも国試の勉強にならないと考えていたからです。したがって、学生諸君は総合試験が終了し卒業が決まってから、国試のための勉強を始めると考えていました。
 この問題に対して、国試対策委員会では2つの作業を行いました。第一に、4,300題もあり学生が不満を持っていた「総合試験準備問題集」の問題を見直し、重複した問題や解説の悪い問題を約900題削除しました。また、準備問題集の問題に国家試験出題基準のコードを付し、これにより出題基準にあるが「総合試験準備問題集」に出題されていない項目を特定することができました。そこで昨年度は、出題基準にあるが「総合試験準備問題集」にない問題を新たに約300題作成し、「総合試験準備問題集」もより国試に即した教科書に変更することができました。
b) 総合試験の合格判定基準
 2年前までは総合試験の判定基準は不明確で、毎年合格ラインが異なっていることから、学生諸君は卒業判定を相対評価である、すなわち毎年決まった数パーセントの学生を留年させると認識していました。したがって、学生が相対評価であると感じているため学生同士の協調性は失われており、これが最大の問題でした。この対策として、4月のはじめに行う6年生のガイダンスで、合格目標点を学生に伝えることにしました。これにより目標点を1点でも超えていれば、全員合格であるという重要なメッセージを送ることができました。これによりグループで学習する、あるいは学生同士で互いに教え合うという理想的な勉強方法が生まれ、同級生同士の良好な人間関係の育成にも結びつきました。これが国家試験対策としては最も理想的で効果の高い方法でした。
c) 総合試験の内容変更と卒業判定の時期
 2006年度より総合試験は、最初にPart 1a 〜 1dの4回に分かれているPart 1の試験を行い、その後にPart 2 の試験を施行し、卒業の合否はPart 1とPart 2の総合点で決めます。Part 1で行う4回の試験は、それぞれ出題の範囲を決めて施行しますので、実力を付けることを目標としている試験です。一方、Part 2は、全科目が試験範囲になりますので、まさに実力を問う試験という位置づけになっています。また、総合試験のPart 1とPart 2の合計点で不合格となった学生は、その後に行う再試験、あるいは最終試験のどちらかで合格点以上を取得できれば、卒業判定も合格としています。
 以前、Part 1の試験の出題内容は、総合試験準備問題集から改変した問題のみの出題でした。しかし、2005年度から過去の国試問題を改変したものも約2割だけ出題するようにし、さらに2006年度からは総合試験のPart 2の試験は、すべて過去の国試問題から出題するようにしました。これにより総合試験は、学生にとって国試のための勉強になるという認識に変わり、学生諸君の不満は大幅に解消しました。
 また、卒業判定の時期について、以前はPart 1 の試験終了後に卒業判定をしていましたが、2005年度にPart 1 に合格しながら国試不合格となった学生が数名いました。そこで2006年度では、Part 2 の試験終了後にはじめて合否判定を行うことにし、10月中旬まで学生全員が真剣に勉強に取り組むことができたことも、今回、国試の合格率が良かった要因の一つと考えています。
d) 国試模試を全員で受験
 例年、学生諸君は個別に全国一斉に行われる国試模試を受験していましたが、昨年度からは大学で申し込み、実際の国試と同じ環境およびタイムスケジュールで模試を行いました。模試を受験する目的は二つあります。第一は3日間に渡る国試と同じような試験を予め経験することによりペース配分を覚えることができます。第二の目的は、試験範囲は全科に渡るため、自分の知識が不足している科目、すなわち弱点を知ることができることです。いずれにしても学生にとっては、予め模試を受験することは本番の国試を受験する際に種々の面で自信となります。

2. 医師国家試験対策からみた医学教育
 医学部では6年をかけて基礎医学から臨床医学を学び、さらに5年および6年生では臨床実習にて、これまで学んできた知識を整理し身に付けます。一方、医師国家試験は、年々少しずつ出題内容や趣旨が変化しており、医学部の学生が知らなければならない基礎的な知識のほかに、より臨床に即した、あるいは臨床実習でなければ知る機会の少ないような問題も取り上げられるようになってきました。今後、私どもの大学で行う医学教育の中で、医師国家試験対策をどのように進めていくべきなのであろうか。これには多くの重大な課題が含まれています。
a) 学生との信頼関係構築と学生同士の相互教育
  第一には大学教員も学生と一緒に医師国家試験対策を真剣に考えなければ、学生と良い信頼関係を築くことはできません。教員自身も医師国家試験で問われる問題の内容を良く理解したうえで、準備問題集や臨床実習の場を通して学生に伝える必要があります。これに関しては、各科の国試対策委員の先生方に準備問題集の問題を国試の出題基準に即するように改訂作業をして頂いたことにより、出題者も国試の出題内容を知ると同時に、学生も国試に即した問題であると認識して問題に取り組むことができました。
また、総合試験の合格目標点を明確にすることは、試験の判定が絶対評価で行われる、すなわち、「ある一定の点数を取れれば良い。」という重要なメッセージになります。これにより学生同士で互いに教え合うという教育方法が生まれ、良い人間関係の育成につながります。
b) 学生に対する生活指導と精神的支援の必要性
 学生には、勉強のみならず国家試験に合わせた規則的な生活を送らせるように生活指導をする必要があります。国家試験は、朝から夕方の昼の時間に行われるため、普段の勉強もこれに合わせて行うべきであり、多くのケアレスミスは、朝方に勉強している者が夕方にミスが多い、あるいはその逆が考えられます。また、国家試験が資格を得る試験である以上、受験する側としては大変なプレッシャーであることは間違いありません。したがって、精神的な問題を抱える学生が少なからずいることを良く理解し、その対応を考える必要があります。それには精神的な悩み、単純なケアレスミスをいかに少なくするかの訓練、勉強のスケジュールの立て方、勉強方法などについて、いつでも相談できる教職員や専門家の育成が必要です。
c ) 6年次卒業判定と留年者の数
 国家試験の合格率が悪い大学では、卒業生の人数を絞るなどの操作が行われていると良く耳にします。本校も2005年4月の時点で19名の6年次留年生を抱えていました。しかし、これは明らかに間違いです。これまで6年生で多年にわたり留年してきた学生諸君をみてみると、精神的な問題を抱える学生が多く、成績の向上を望むことは極めて難しい状況です。したがって、大学としては、各学年で進級判定をきちんと行い、学力の不足している学生はその学年次に留年して学力を補ったうえで進級すべきで、6年次での留年は極力避けるべきと考えます。東海大学医学部の基本方針は、医師としての知識や技術の修得のみならず、医師に相応しい人間性を育てることにあります。これには、医学教育について教職員も学生も一緒になって考え、共に問題を解決していく姿勢が大切と思います。星医会の皆様にも今後ともお世話になることも多いと思いますが、何卒よろしくご指導のほどお願い申し上げます。


第101回医師国家試験結果
受験者数 合格者数 合格率 全国平均
本学出身者 117 106 84.4% 87.9%
新卒者 100 97 97.0% 92.3%
既卒者 17 9 52.9% 48.4%




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