星医会 東海大学医学部同窓会
 
 会報(第38号)
 〜平成20年3月1日発行〜


学内准教授誕生

准教授に昇格して
東海大学医学部内科学系
循環器内科  吉岡 公一郎(7期生)


 このたび内科学系准教授に昇格させていただきました。御推挙していただきました内科学系長高木敦司教授ならびに循環器内科田邉晃久診療部長に深く御礼申し上げます。
 20数年前、小生が研修医になって初めてのローテト先は循環器内科でありましたが、当時のオーベンであった今岡千栄美先生には、電気的除細動器(DC)の使い方から不整脈全般の学問に及び、手取り足取り丁寧にご指導いただきました。最初に担当した症例は一日のうちに持続性心室頻拍(VT)が10数回出現する患者さんでありましたが、何度となく再発するVTに対してDCをかけながらもう少し有効な治療法は無いものかと考えをめぐらせたものです。最終的には不整脈をコントロールすることが出来ないまま手術目的に他大学の心臓外科へ転院することになり、その時抱いた悔しさは、その後不整脈を専攻するきっかけになりました。   
 循環器内科入局後、大学院での研究テーマはイヌの病態心を用いて致死性不整脈における電気生理学的機序を解明することでした。吉川広先生や高橋潔先生など諸先輩とともに挑んだ動物実験でありましたが、心電情報を収集する前に心室細動(VF)になってしまい、実験が終了することもしばしばでした。その度に田邉教授から「これではまるで犬死にだ。犬に申し訳がないだろう!」と檄を飛ばされたことを思い出します。この苦い思では、いまなお実験をするたび大きな緊張感を呼び起こし、尊い命を無駄にしないように研究に取り組むべきであるという深い教訓になっています。
 大学院終了後は米国にありますカルフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)への留学を許可されたわけですが、渡米先のサンフランシスコは季候も良く研究環境も快適でした。しかし留学先の身分は収入も少なく、日々の生活は楽ではありませんでした。そんな中で、カテーテルアブレーションの草分けであるDr Scheinman, Dr Leshの講義や実験に参加する機会に恵まれ、不整脈領域において非薬物治療を開拓していく新時代の勢いを感じとることができました。
 その後3年間、研究に没頭する毎日を送っていた頃、当時東海大の生理学教室にいらした盛 英三先生(現:国立循環器病センター生理学部部長)がUCSFをご訪問され、重粒子線を用いた不整脈治療を開発してほしいというご依頼を受けました。重粒子線は1990年より、千葉放射線医学研究所において外科的手術が困難なガンに対する先進医療として世界に先駆けて開発された放射線学であり、そのガン殺傷効果は既存の放射線を遙かに上回る優れたものでありました。ところが我々にとって悪性腫瘍は最も縁遠い疾患であり、心臓に対して放射線を照射することの生物学的効果は全くの未知でありました。
 1998年に米国より帰国してからおよそ10年間、放医研・東海大学・名古屋大学においてin vivo, in vitro実験を積み重ね、昨年重粒子線が心室の再分極時間を均一化し、その結果VT/VFを抑制することを世界で初めて報告しました(Cardio vasc 2006, 医科学応用財団優秀論文賞受賞)。放医研での実験は毎回平日の深夜から開始して早朝に及んだため、翌日の勤務は疲労が重なり、また実験当初は照射により心臓を焦がしてしまうことも少なくなく、実験の方向性に大きな不安を抱いたものです。しかしながら、共同研究者である生理学教室の田中越郎先生(現:東京農業大学教授)、当科の藤倉寿則先生、名古屋大学環境医学研究所児玉逸雄教授、動物支援センター田中幸恵さん、当科の網野真理先生他、数多くの研究協力に支えられ今日まで続けて来ることが出来ました。
重粒子線の不整脈治療を臨床応用するのに解明しなければいけない問題は山積みですが、年間5〜8万人にものぼる心臓突然死に対する革新的な治療法の開発を目指し、今後も精進していく所存です。

【お詫び】
 第37号(P.15)に掲載いたしました腎代謝内科学准教授 角田隆俊先生の文章に重複している部分がございました。角田先生並びに関係各位に深くお詫び申し上げます。



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