星医会 東海大学医学部同窓会
 
 会報(第39号)
 〜平成20年9月1日発行〜


第14回星医会賞決定!!


星医会賞担当理事 今岡 千栄美(3期生)

 本年3月9日、星医会総会において星医会賞の表彰が行われました。星医会賞も本年で第14回を数え、過去最多を記録した昨年と同様12編の応募がありました。
 さて、この中から受賞の栄誉を勝ち取られたのが田中里佳先生(23期生)で、
 論文表題は、The Effects of Flap Ischemia on Normal and Diabetic Progenitor Cell Functionです。
 そして、星医会奨励賞には、今年も甲乙付け難く2論文が選出されました。
 ひとつは、鈴木利貴央先生(23期生)の
 Preferential hypermethylation of the Dickkopf-1 promoter in core-binding factor leukaemia、
 もうひとつは、隅山香織先生(21期生)の
 Nkx2.2 Expression in Differentiation of Oligodendrocyte Precursor Cells and Inhibitory Factors for Differentiation of Oligodendrocytes after Traumatic Spinal Cord Injury
 田中先生、鈴木先生、隅山先生、素晴らしい論文でした。おめでとうございます。
 最後に、残念ながら受賞には至りませんでしたが今回ご応募いただきました先生方、ご尽力、ご協力いただいた皆様方に心より御礼申し上げます。
 今号に田中里佳先生、鈴木利貴央先生、隅山香織先生の受賞論文要旨を掲載しております。
ぜひご精読ください。
 今年も既に、三人の先生に続く卒後10年以内の若手研究者諸氏の成果を募集受付しております。
 もちろん、学外からのご応募も大歓迎です。
 高質の研究成果で賑わう星医会賞を期待しております。



第14回星医会賞

皮弁虚血障害における糖尿病性血管内皮前駆細胞の
細胞生物学的活性
田中 里佳(23期生)

【背景・目的】
 組織虚血により血管内皮前駆細胞(Endothelial Progenitor Cells :EPCs)が骨髄から末梢血へ強制動員され、血管発生に関与することが明らかになってから虚血性障害の原因としてのEPCsの役割が注目されてきた。我々は過去に末梢血EPCsが皮弁虚血障害時の血管形成に関与し、糖尿病(DM)患者末梢血EPCsにてその機能が低下していることを報告している。しかし皮弁虚血障害における骨髄EPCsの細胞生物学的活性についての検討はされていない。本研究は健常マウスとDMマウスの皮弁虚血障害における骨髄、末梢血EPCの細胞活性を明らかにすることを目的とした。
【方法】
 C57BL6JマウスにStreptozotocin投与によりDMマウスを作成。皮弁虚血モデルをDMと健常マウスに作成し、作成後1、3、7日目にEPC分画を含む骨髄Ln- c-kit+ Sca-1+細胞(BM−KSL)及び末梢血単核球(PB-MNC)を採取。皮弁作成後の末梢血EPCsをEPC Culture Assay法にて、骨髄EPCs数をFACSにて解析した。血管発生能力はVasculogenic Colony Forming Assay 法(VCFA)による未分化型(CFU-pEPC)、分化型(CFU-dEPC )EPC Colony数評価を行った。
【結果】
 健常群において皮弁虚血障害は、有意に末梢血EPCsを動因し(25±0.5/hpf day 7 vs 9.0±0.6/hpf, p<0.01)、皮弁作成後3日目にいずれのコロニー数も最高となった(CFU-pEPC; 23±3.2 vs 13.5±0.8; p<0.05, CFU-dEPC;11.2±3.9 vs 2.8±0.3, p<0.01)。健常群BM においてEPCs数は、皮弁作成後3日目(2.1±0.3x105 vs 1.3±0.1x105, p<0.05)に最高となり、CFU-dEPC数は作成後1日目(13.4±2.5 vs 7±1.1 p<0.01)、CFU-pEPC数は作成後3日目(36±1.9 vs 27±1.6; p<0.05)に最高となった。一方、DM群では健常群に比べ末梢血EPCs動因数の低下(5.8±0.4/hpf day 7 vs 9.0±0.6/hpf、p<0.01)とCFU-dEPC低下(2.4±0.9 day 1 vs 5±1.4; p<0.05)を認めた。DM骨髄においては、皮弁作成後EPCs数は健常群同等に認められたが、CFU-dEPC数は有意に低下していた。(5.7±0.8 vs 13.4±2.4 at day 1, p<0.05)。
【考察】
 皮弁虚血障害はBM-EPCsの血管発生能を活性化し、皮弁の血管形成に関与していると考えられる。DM性皮弁虚血障害においては、骨髄と末梢血EPCの分化能低下が認められた。このように、DM患者のEPC細胞生物学的活性の低下が皮弁虚血時の血管再生能力の低下に関与していると考える。




星医会奨励賞

 CBF白血病におけるDickkopf-1遺伝子の
プロモーター領域の高度メチル化
鈴木 利貴央(23期生)

【背景】
 急性骨髄性白血病(Acute Myelogenous Leukaemia)の発症には白血病細胞の増殖と生存に対して促進的に作用する遺伝子変異(Class I遺伝子変異)と、細胞の分化阻害や自己複製に関与する遺伝子変異(Class II遺伝子変異)を共に獲得することが必要十分条件とされている(two-hit theory)。癌抑制遺伝子であるDickkopf-1(DKK-1)遺伝子の遺伝子産物は細胞外Wnt抑制因子として知られている。また、同じく細胞外Wnt抑制因子であるWnt Inhibitory Factor-1(WIF-1)のプロモーター領域のメチル化が急性前骨髄球性白血病(Acute Promyelocytic Leukaemia)で高頻度に認められることが報告されている。
【目的】
 そこで我々は急性骨髄性白血病(AML)、特にCore-Binding Factor(CBF)白血病においてDKK-1WIF-1のプロモーター領域のメチル化を検討した。
【方法】
 検討には当院で診断・治療されたAML患者検体47症例、AML細胞株、5名の正常者骨髄検体を使用した。AML患者47症例と5名の正常者からは同意書にてインフォームドコンセントを取得した。DKK-1メチル化の状態の解析にはメチル化特異的PCR(Methylation-Specific PCR)とBisulfite Genomic Sequencing(BGS)を用いて解析した。
【結果】
 DKK-1メチル化は正常者骨髄検体において全く認められなかったが、AML47例中14例(29.8%)で認められ、CBF白血病症例において更に高頻度に認められた(12症例中6例)が、APLでは全く認められなかった(6症例中0例)(p= .03)。対照的にWIF-1メチル化はAPL症例で高頻度(6症例中4例)に認められたが、CBF白血病症例では全く認められなかった(12症例中0例) (p= .001)。初診時と再発時の骨髄液サンプルが保存されている4症例の解析ではDKK-1メチル化は白血病の病態の進展に含まれることが示唆された。
【考察】
 DKK-1プロモーター領域のメチル化はClassI遺伝子変異と同様に細胞増殖を促進することで、leukemogenesis(白血病進行)、特にCBF白血病発症メカニズムに大きく関わっている可能性がある。そしてAMLにおいて有益な予後因子となりうる可能性がある。




星医会奨励賞

外傷性脊髄損傷におけるオリゴデンドロサイト前駆細胞での
Nkx2.2の発現および分化・誘導阻害因子についての検討
隅山 香織(21期生)

【背景・目的】
 これまで、外傷性脊髄損傷に臨床的に即したモデルである圧挫滅脱髄モデルでは、白質脱髄後オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)の増殖は起こるが再髄鞘化は生じないとされてきたが、多発性硬化症のモデルである薬剤注入による成熟脊髄の化学的脱髄モデルでは再髄鞘形成が認められている。再髄鞘形成の差を生じる要因として、これらの脱髄モデルにおけるOPC分化・成熟過程の分析は重要である。近年、胎生期OPCの分化にHD transcription factorの一つである Nkx2.2が関与しており、化学的脱髄モデルにおけるOPCの分化にも Nkx2.2が関与していることが報告されている。今回、圧挫滅脱髄モデルと化学的脱髄モデルを比較することにより、圧挫滅損傷でのOPC分化におけるNkx2.2の発現の関与と、これらに影響し得る環境因子について検討した。
【方法】
 12週令SDラットの頚椎椎弓切除後、化学的脱髄は1%Lysophatidylcholine2μlを脊髄後索内に注入して作成し、圧挫滅脱髄は脊髄後索上に35g重錘を5分間静置して作成した。圧挫滅脱髄は損傷24時間後にBrdUを注射し、2,7,14,28日後に摘出した脱髄部脊髄を横断凍結切片とした。マーカーとしてOPCはNG 2を、成熟オリゴデンドロサイト(OL)はGSTYpを用いて、BrdU 、Nkx2.2との蛍光二重免疫染色を行い、化学的脱髄モデルにおける同様の実験結果と比較検討した。また、両モデルで作成6,12,24,48時間後のラット損傷部脊髄を摘出しmRNAを抽出してRT-PCR法にてサイトカインとNkx2.2の定性を行い、発現の差を認めたサイトカインをreal time PCR法にて定量した。
【結果】
 圧挫滅損傷では損傷2日後にBrdU陽性OPCは増加したが以後は減少し、BrdU陽性OLは認められなかった。圧挫滅損傷モデルでは、非脱髄部Nkx2.2陽性OPC・OLはともに有意な増加は認められなかった。脱髄部では、14日後に、Nkx2.2陽性OPCが有意に最高値を示し、以後は減少傾向を呈した。同部での明らかなNkx2.2陽性OLは認めなかった。RT-PCR法によるサイトカイン検出では、圧挫滅脱髄モデルで6〜12時間後のIL-1β、12時間後のIL-6、TGFβ1が強発現を呈したのに対し、化学的脱髄ではいずれも発現は微弱であり、Real-time PCRによる定量では、圧挫滅脱髄モデルにおいて損傷6時間後のIL-1βとIL-6の有意な増加を認めた。
【考察・結論】
 2つの脱髄モデルの結果を比較すると、圧挫滅脱髄部のNkx2.2陽性OPCは最高値に達する時期が化学的脱髄より遅延し、かつ低値であり、脱髄部でのOL形成は認められないことから、外傷性脊髄損傷後のOPC分化阻害にはNkx2.2の発現障害が関与している可能性が示唆された。この要因として、両モデル間で発現に差異を呈したサイトカインがOPC分化あるいはNkx2.2発現を阻害している環境因子の一つとなりうる可能性が考えられた。



▲ページのトップへ



第15回星医会賞募集

 応募方法
1. 自薦・他薦は問わない
2. 英語あるいは日本語による学術論文とし、本会会員が筆頭著者であるもの
3. 資格は本会入会後10年以内の者とする(本年の場合は、20期生以降)
4. 締切は毎年11月30日
  (前年12月1日から当年11月30日までに掲載された学術論文(ひとり1論文)
5. 別刷またはコピーを5部を申請用紙と共に提出する

 問合せ及び応募書類送付先
〒259-1143 神奈川県伊勢原市下糟屋143 東海大学星医会事務局
          TEL:0463-93-1121(内線4104) FAX:0463-91-5913




▲ページのトップへ
←目次へ戻る
←会報のページへ戻る