星医会 東海大学医学部同窓会
 
 会報(第40号)
 〜平成21年3月1日発行〜


新任教授紹介

教授就任に際して
基盤診療学系健康管理学 教授 高橋 英孝

 平成20年7月1日付けで、東海大学教授(医学部基盤診療学系健康管理学)を拝命いたしました。
 私は昭和63年に昭和大学卒業後、東京女子医科大学の呼吸器内科に勤務し、その後は大学と民間病院の人間ドック部門とを行き来して参りました。専門は予防医学で、生活習慣病の疫学や産業医学を学びながら、人間ドックや健康診断に関するエビデンスを確立する仕事を続けています。
 大学では衛生学や公衆衛生学に所属しておりましたが、私のフィールドは社会医学領域というよりも臨床領域でしたので、東海大学医学部の基盤診療学系健康管理学という領域はまさに私のためにあるという思いでした。現在は八王子病院の健康管理センターでセンター長としての診療面での仕事が主でありますが、研究面や教育面でも東海大学医学部発展のお役に立てるよう努力する所存です。
 診療面では受診者の増加が当面の課題になると思いますが、テーラーメードの人間ドックシステムの確立、保健指導体制の充実、地域医師会との連携、新たな人間ドック検査項目の追加なども重要です。
 労働安全衛生法などの法律的根拠がある健診と違って、任意の健診である人間ドックには定義(標準項目)がありません。今後は、人間ドックの定義についても医学的根拠に基づいた提案をしていくつもりです。
 私自身は人間ドック創成期を生きた先輩医師たちから貴重なアドバイスを受け、学問としての予防医学を実践する大切さを学びました。医学部の教育では統計学や臨床疫学の分野で予防医学的内容を学ぶと思いますが、予防医学の第一線で勤務する医師の声を聴くことがほとんどないためか、若い医師がこの分野に進出することがほとんどありません。今後は人間ドックに代表される予防医学の実践を専門とする若い医師の養成が急務だと思います。臨床研修必修化に伴い「地域保健」の項目が新設されました。私が医学部の教員時代に「地域保健」の1ヶ月を複数の健診センターにお願いしたところ、研修医からは好評を得ました。学問体系としての予防医学を基礎医学的側面だけでなく臨床医学的側面からも確立することで、臨床医学としての予防医学(医療)に携わる医師を育成したいと思います。
 医療機関では車椅子での利用を考慮した物理的なバリアフリー化を実施している施設は少なくないものの、聴覚障害者などへの情報に関するバリアフリー化が遅れています。これまでに胃部X線検査の際に技師からの指示を手話と文字と動作を示すアニメーションでモニタ上に表示する「聴覚障害者向け情報提供システム」や、手足に取り付けた装置を無線で振動させることによって動作や呼吸に関する指示を伝える「ワイヤレスコミュニケーションシステム」を開発し、胸部・胃部X線検査や腹部超音波検査に対応してきました。このように情報技術を応用することで、従来は不可能と考えられていた検査も実施可能になりつつあります。
 以上、予防医学新時代に向けての抱負を述べさせていただきました。ひと昔前は富裕層をターゲットとした健診と考えられていた人間ドックが、現在では予防医学発展のために重要な役割を果たすべき存在になりつつあり、今後は人間ドック受診による生活習慣病予防効果や医療経済的効果などのエビデンスを明らかにしていく必要があります。東海大学医学部における教育・研究・診療のいずれにおいても全力を尽くす所存です。


呼吸器内科教授就任にあたって
内科学系呼吸器  教授 阿部 直

 2008年7月1日付けで東海大学医学部内科学系呼吸器内科教授を拝命しました阿部 直(ただし)です。どうぞよろしくお願い申し上げます。就任にあたり、星医会の皆様方に一言ご挨拶申し上げます。
 私は、1974年に慶応義塾大学医学部を卒業後11年間母校におり、その後北里大学医学部に移り、2年半のカナダ・マギル大学勤務の後、約20年間北里大学に勤務しておりました。呼吸器内科が専門ですが、北里大学での最近の5年間は医学教育研究部門の責任者として、医学教育にも深く関わってまいりました。
 東海大学医学部には、創立以来、先進的な医学教育を実践し、他の大学の模範となってきた歴史があります。呼吸器内科としても、これまで以上に医学部の学生教育に力を入れたいと思います。また、東海大学付属病院の最先端の機能、設備は、優秀な呼吸器内科医を育てるには最高の環境です。呼吸器内科のスタッフと力を合わせて、臨床から研究の課題を見つけだして、研究成果を臨床に活かすことができるような立派な呼吸器内科医を一人でも多く輩出できるようにしたいと考えています。学生教育と卒後教育の分野では、北里大学での経験、特に5年間の医学教育研究部門での経験を活かしたいと考えております。
 現在、東海大学医学部付属病院の呼吸器内科の教室員は、准教授1名、講師2名、助教1名、大学院生1名に私を含めて、合計6人で、他の大学病院の平均的な人数の約1/3程度です。幸いなことに、優秀で熱心な医師が揃っていることと、総合内科の支援により、暖かみのある最先端の診療を維持できておりますが、他の3つの付属病院も呼吸器内科医が少なく、医師数を増やすことが最も大きな課題です。しかしながら、呼吸器内科医は、全国的に医師数が少ない診療科のひとつで、外部からの医師採用によって、医師数を確保することは容易ではありません。外部からの採用以上に重要なことは、時間がかかっても長期的な視野に立って、呼吸器内科医を育成することと考えております。
 神奈川県には、4つの医学部(医科大学)付属病院の本院とその他複数の医学部付属の分院があります。その中で東海大学医学部付属病院は、神奈川県の最も西にある大学付属病院です。神奈川県西部では呼吸器内科の専門医が少ないので、伊勢原周辺だけでなく、西神奈川の地域医療全般に、これまで以上の貢献ができるように努力したいと思っております。大学病院が地域に対する人材の一方的な供給源であった時代は終わりつつあると思います。今後は、大学病院と地域の医療施設とが協力して人材を育てるシステムを作り上げていくことが重要と考えています。
 私はこれまで、基礎的な研究では、大学院で呼吸音の音響学的解析、オッシレーション法による呼吸器インピーダンスの研究を行い、留学中からはイヌやヒトの呼吸筋の活動から呼吸の調節を研究してまいりました。臨床的なものでは、睡眠時無呼吸、呼吸器疾患患者の夜間の低酸素血症、呼吸不全、じん肺などを研究してまいりました。今後は、これまでの研究を発展させるのみではなく、さらに臨床的な研究の比重を高め、肺がんの研究も進めたいと思っております。
 以上、呼吸器内科教授就任にあたり、抱負を述べさせて頂きました。今後、将来の東海大学内科学系呼吸器内科の発展の方向を見据えて、10年後、20年後にも評価されるような業績を残せるように努力する所存です。星医会の皆様方には、引き続き暖かいご支援とご協力をお願いしたく存じます。
 末筆になりましたが、星医会の会員の皆様方のご健勝と星医会の一層の発展を祈念してご挨拶とさせていただきます。



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次世代の周産期医療を担う人材の育成にむけて
専門診療学系産婦人科学 教授 石本 人士

 2008年7月1日付けで専門診療学系産婦人科学教授を拝命いたしましたので、一言、ご挨拶させていただきたいと存じます。
 東海大学産婦人科では、すでに三上幹男教授が婦人科腫瘍、和泉俊一郎教授が生殖内分泌に関して診療・研究・教育を統括する体制が組まれておりましたが、この度、私が産科・周産期部門を担当させていただくことになりました。
 大学附属病院は総合周産期母子医療センターを有し、県央地区の基幹病院として周産期医療を担っております。しかし皆様ご承知のように周産期医療は今や全国的に危機的状況にあります。問題の第一はマンパワーの不足です。人材の確保が医療安全の担保や患者中心の医療の実践のために喫緊の課題ですが、直ちに人的量的充実を図ることは、残念ながら困難であります。そこで今我々がなし得ることは、医育機関としての原点に立ち戻り、学生・研修医を教育し、一人でも多く我々の仲間となって地域医療を支えてくれる人材を育成することだと考えます。医学生や若手医師に産婦人科の醍醐味を熱く伝え、彼らから如何に興味や能力を引き出していけるかが重要です。一層気を引き締めて任にあたる所存であります。また医師が能力を伸ばす条件のうち、多くの患者を診られること、勉強する時間があること、議論できる仲間がいること、他と交流できることは重要な要素です。このような環境を三上、和泉両教授やスタッフの皆さんと協力して、より一層整備していきたいと思います。さらには病診連携・病病連携により機能分担を図り現存の医療資源を有効活用し、学術的な啓発活動においてはリーダーシップを発揮して、地域医療に貢献したいと考えております。
 周産期医療の問題は産科診療の改善だけでは解決しません。妊婦だけではなく胎児・新生児もまた患者であります。周産期医療に携わる多くの施設が共通に抱える問題点として、ソフト(人的資源)とハードの両面において、なかなか産科と新生児科の足並みが揃わないことが指摘されています。産科と新生児科は車の両輪であって、どちらか一方が欠けても周産期医療の成績は向上せず、地域から十分な信頼は得られません。そこで新生児科の先生方とは常に問題点を共有し、コミュニケーションを十分にとって患者中心の医療、EBMに基づいた医療の実践を進めてまいりたいと存じます。
 診療・教育に忙しい昨今の産婦人科医はなかなか研究には時間が割けませんが、本来は大学医学部臨床系部門の社会的使命(教育・診療・研究)のうち大学が大学である所以は、一歩でも二歩でも医学・医療を前に進める礎となる研究を行うことであると考えます。そして臨床家の行う研究は、臨床の疑問点に根ざし、あるいは臨床の進歩に繋がるものでなければなりません。私は米国留学中、指導教授からphysician scientistとしての在り方と、後進養成に努力を傾注する姿勢を学びました。私もこれに倣い後進を指導して、彼らの中にresearch mindを育んでいきたいと思います。
 人材の育成が実を結ぶには時間を要しますが、「雨垂れ石を穿つ」と存じます。私は地道な日々の教育の努力以外に「良医の育成」の王道はないと考えております。星医会の皆様におかれましては、今後なお一層の御指導、御鞭撻を賜り、次代の産婦人科医療を背負う人材養成に対する我々の取り組みを暖かく見守っていただきますよう、この場をお借りしてお願い申し上げる次第です。


リハビリテーション科学の新たな飛躍に向けて
専門診療学系リハビリテーション科学 教授 正門 由久

 平成二十年七月一日付けで、東海大学医学部専門診療学系リハビリテーション科学教授を拝命し、着任いたしました。
 東海大学医学部専門診療学系リハビリテーション科学は、昭和五十六年に村上惠一初代教授のもとリハビリテーション学教室として開講され、昭和五十八年から、石田 暉講師が加わり、診療、研究をはじめ、研修医を指導し、お二人で現在のリハビリテーション科学の基礎を築かれました。所属医師の数も増え、立派な講座となり,平成八年には村上教授が第三十三回日本リハビリテーション医学会を主催されました。平成九年九月には石田先生が二代目教授に就任され、さらに発展を続けておられましたが、残念なことに石田教授は平成十九年一月に急逝されてしまいました。平成二十年六月開催の第四十五回日本リハビリテーション医学会会長に決定していた石田教授の遺志を受けて、学会長は理事長が代行されましたが、実質的には東海大学医学部専門診療学系リハビリテーション科学に所属する医師たちが精力的にその運営に努め、同学術集会が大成功裡に終わったことは記憶に新しいところです。このような立派な伝統のある、活気に満ちた東海大学医学部専門診療学系リハビリテーション科学で働かせていただくことは、大変に光栄なことと感じております。
 私は、もとより微力ではございますが、東海大学におられる諸先輩、諸先生方が築き上げてこられたものを大切にしながら、診療・教育・研究に誠心誠意努力し、上述した“パワーあふれる”スタッフとともに力を合わせ、リハビリテーション医学・医療のさらなる発展に寄与し、後進の育成に努力してゆく所存でございます。次世代を担う、優秀な人材を多数育て、質の高いレベルの医学・医療を通じて、患者さんが健康で生活できる社会となるように今後も一層努力したいと思います。また和を持って一致協力しながら、リハビリテーション科学の新たな飛躍に向けて、今後も一層努力する所存です。
 東海大学医学部専門診療学系リハビリテーション科学のミッションは、医学生にリハビリテーション医学を教育し“良医”を育成すること、将来のリハビリテーション医学・医療を担う優れた専門医を育成し、地域社会に貢献していくことと考えます。これらにより、医学へ貢献し、素晴らしい医療の実践ができるものと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 現在まで、先生方から東海大学医学部専門診療学系リハビリテーション科学に賜りました格別のご厚情に心よりお礼申し上げますとともに、今後ともなお一層のご指導ご鞭撻を賜りますようにお願い申し上げます。




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