星医会 東海大学医学部同窓会
 
 会報(第41号)
 〜平成21年9月1日発行〜


新任教授紹介

教授就任に際して
基礎医学系生体防御学 教授 藤本 修平

 皆さん初めまして。生体防御学の教授として赴任いたしました藤本です。私は内科医としてスタートし細菌学者になりました。細菌学者として最初の10年間はおもに腸球菌の病原因子の分子生物学的研究に携わりました。腸球菌の病原因子の拡散に深く関わるフェロモン依存接合伝達プラスミドの伝達機構、毒素生産機構の解析を行い、フェロモン受容体の同定・精製・機能解析などの成果を上げ、同時に遺伝子配列決定、遺伝子導入、蛋白過剰発現、蛋白のDNA結合と信号伝達の解析法において新技術を提供することが出来ました。
 約10年前から、新分野として電子化(コンピュータ化)による感染対策の高精度化・効率化に取り組んでおります。
 東海大学病院も参加いただいている厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)事業、国立大学感染症監視システム(NUICS)、標準化病院感染症監視システム(SHIPL)を世に送り出しましたが、これらの普及・活用はこれからの課題です。
 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、多剤耐性緑膿菌(MDRP)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)など多剤耐性菌による難治院内感染症が増加しています。これは医療の高度化、社会の高齢化に伴い、弱毒菌による日和見感染症が増えたこと、それらの弱毒菌が常在菌や環境菌として病院内に長時間とどまるために抗菌薬による選択を受けやすいことによるもので多剤耐性菌による難治院内感染症の増加は社会・医療の変化によっておきた必然的現象と考えます。一方、新規抗菌薬の開発は著しく停滞しており、今後7〜8年の間に発売が期待できる新規抗菌薬はせいぜい数件にとどまります。国民の安全を守るために新規抗菌薬だけに頼らない耐性菌対策を講じる必要があり、さらに、医療福祉経済の困窮をふまえ、効率的対策を考える必要があります。
 私は、①院内感染症の抑止、②耐性菌拡散の抑止によって耐性菌による院内感染に対抗することを考え、システムの開発を行ってきました。日常の細菌検査の情報から、院内感染の早期・未然の発見を可能にするアルゴリズム、菌の院内拡散を視覚化して院内感染事故のリスク把握を助けるアルゴリズムを開発し、市販システムに実装しました。これらのアルゴリズムによって院内感染症を未然に防げるというデータが出ており、国のサーベイランスシステムにアルゴリズムを実装する計画も動き始めております。
 一方、このようなシステムが普及しないことをふまえ、原因の調査を行いました。その中で、感染対策を担っている現場の専門家でさえ、個々の事例が院内感染かどうか判断出来ないことが多く、院内感染のリスク評価が的確に行われていないという問題が浮かび上がりました。リスクがはっきりしないので、どの程度の経費を感染対策に使うのが適当か判断できず、システム導入の経費を出せないと言う問題です。感染対策システムによって院内感染かどうか容易に判定できるようになりますので、一旦システムを導入するとリスクが正しく評価され(沢山の「ひやりはっと」事例が見つかることが多い)、システム導入の効果が評価されます。現場の先生方に、この問題に気づいていただけるようJANISなどにおいてより精度の高いデータを還元できるよう研究を続けております。
 今後、システムの普及を図りつつ、研究を続け、成果をまとめ、同時に臨床、基礎的研究、疫学、システム構築で学んだことを次世代に受け継ぐべく教育に献身をする所存です。皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。


これまでもこれからも
外科学系口腔外科学 教授 太田 嘉英

 2009年4月1日付けで東海大学医学部外科学系口腔外科学領域教授を拝命いたしました。私は1985年に東京歯科大学を卒業し、すぐに東海大学の前期研修医として伊勢原に参りました。以来短期の出向を除いて伊勢原で働かせていただきました。お陰で本院での在籍年数は2009年7月現在22年10ヶ月と口腔外科に在籍経験を有するものの中で、初代佐々木次郎教授に次いで2番目です。私が研修医に採用された学年は星医会の6期生に相当します。この時期は1期生の先生方がはじめての助手、2期生の先生方がチーフレジデントで、星医会の先生方が本当の意味での活躍を始められた年だと思います。研修医になりたては驚きの連続でした。同期の星医会の先生がとてもよく面倒を見てくれましたが、最初に驚いたのは夕食をともにした後に一言、“さあこれから勉強しよう”。国試が終わったばかりの少し気が抜ける時期に、良い医師になるために楽しんで勉強をしている姿に大きな刺激を受けました。また併診していただいた1期生の先生から色々質問され、答えられないと真剣に怒ってくれました。このように歯科医師である私に対しても医学部卒業者と分け隔てなく、麻酔科、形成外科、病理診断科のローテーションや併診、共働手術さらには学会活動などを通じて今日の礎となる教育を授けて下さったことを星医会の先生方に本当に感謝しております。また研修医時代に星医会の先生方と旅行をしたり、宴会やバーベキューをしたりと今までの人生で最良の時期を一緒に過ごさせていただいたことも私にとって大きな財産です。私は他学出身ですが、卒業直後より研修を受けた東海大学は私にとっての第2の母校だと思っています。
 私は口腔悪性腫瘍を最も専門としています。東海大学の口腔悪性腫瘍の症例数は日本でも屈指です。口腔は消化管の一部ですが、他の消化管と比べて形態的機能的に複雑なため、腫瘍浸潤の深達度評価を客観的に行うことが困難で、切除にあたり深部マージンの設定は主に術者の手指の感覚に頼って行われてきました。私たちは解剖学的基準に基づいた精密な画像診断評価による客観性の高いマージン設定を行い、その成果を学会のシンポジウムや外国誌に報告してまいりました。それらが高い評価を受けることができましたのも、私と東海大学口腔外科を育てて下さった先生方のお陰だと思います。また悪性腫瘍以外の専門である顎変形症やインプラント治療、ビスホスホネート製剤による顎骨壊死、障害者治療など、今まで育てていただいた先生方にご恩返しする意味でもエビデンスレベルの高い手術、質の高い医療を提供するべくより一層の努力をしていく所存です。
 今年度から頭頸部腫瘍センターが稼働することとなりました。口腔癌を含めて頭頸部癌は手術による顔面の変形や嚥下障害など治療後のQOLへの配慮が重要な疾患です。頭頸部腫瘍センター長、耳鼻咽喉科大上研二教授や形成外科宮坂宗男教授らとこれまで以上に協力していくことによってより良い医療が提供でできるものと確信しております。
 超高齢化社会である現在、歯や口腔ケアの問題など先生方のお役に立てる場面はますます増えていくと思います。これまで以上に私たちをご利用いただきますとともに、ご指導ご協力をよろしくお願いいたします。



▲ページのトップへ




東海大学八王子病院循環器内科教授就任に当たって
内科学系循環器内科学 教授 小林 義典

 この度、平成21年4月に東海大学医学部内科学系・循環器内科教授を拝命しました。大変光栄に存じますとともに、与えられた責任の重さに身の引き締まる思いをしております。私は昭和56年に日本医大を卒業し、その後28年間日本医大第一内科で不整脈学を研鑽してまいりました。約1年半前になりますか、幸運にも伊勢原病院の田邊晃久教授のお眼鏡に適い、東海大学で一緒にがんばらないかとお誘いいただきました。しかしその頃は、職場を異動することは考えておらず、また自己の体力や気力に自信が無かったので、失礼を省みずしばらく時間を下さいと返事をさせ頂きました。その後、たまたま三浦雄一郎隊の一員としてエベレスト遠征に参加する機会があり、そのお蔭で気持ちが吹っ切れたといいますか、新天地で頑張ろうという気力がわいてきました。
 それからは急いで提出書類を作成、本部に提出しました。その後は短期間で審査を進めていただきましたが、その教授承認の過程で、田邊先生、八王子病院の北川院長を始めとして東海大学医学部教授会や循環器内科の先生方に大変お世話になりました。
 さて、私が循環器内科教授を拝命し、八王子病院に配属された理由は二つあると思っています。最初に、八王子地区の循環器診療は虚血性心疾患に関しては東海大学病院を含めて先端的な治療を積極的に行っている施設が複数ありますが、不整脈診療に関してはかなり遅れているといわざるを得ません。私に声をかけていただいたのは、その不整脈診療レベルを向上させよということと理解しています。二つ目は不整脈診療から派生する臨床研究を活発化させ、学会や論文の業績を増やすことが私に課せられた重大な使命と考えています。この目標を達成するためには、八王子病院のみならず、本院を含めた循環器内科の先生方のご協力が不可欠です。また、地域開業医との連携を緊密にし、さらには地元のもう一つの大学病院である東京医大八王子医療センターとも有機的な連携をとっていきたいと考えています。
 2010年度には日本不整脈学会カテーテル・アブレーション関連秋季大会(ライブデモ、アブレーション・セミナー、公開研究会)を主催する予定です。10月21-23日の会期で、東京国際フォーラムで行います。例年参加者が1500人を超える比較的大きな学会です。成功に導けるように鋭意努力をしてまいりますので、ご協力のほど宜しくお願い申し上げます。


東海大学耳鼻咽喉科教授に就任して
専門診療学系耳鼻咽喉科学 教授
同付属病院 頭頸部腫瘍センター長 大上 研二


 2009年4月1日付けで東海大学医学部耳鼻咽喉科教授、頭頸部腫瘍センター長を拝命いたしました。星医会の先生方に、ご挨拶申し上げます。
 私は1986年に山口大学を卒業、耳鼻咽喉科に入局しました。 1999年に当時の耳鼻咽喉科高橋教授が東海大学教授として赴任されたのをきっかけに、東海大学に異動しました。本学に異動してちょうど10年の節目に教授、センター長という大役をいただきました。飯田教授、田村教授(付属八王子病院)とともに耳鼻咽喉科のサブスペシャリティとして頭頸部腫瘍の診療、教育、研究にあたることとなりました。
 大学院終了以降、一貫して頭頸部癌の臨床研究、基礎研究に従事してきましたが、大きな転機となったのが1996年からの2年間、米国ジョンス・ホプキンス大学で頭頸部扁平上皮癌の癌抑制遺伝子異常について基礎研究に従事したことです。分子生物学の基礎から最新の癌抑制遺伝子変異について研究する機会を得ました。師事したSidransky教授は頭頸部に限らず、肺癌、前立腺癌なども研究対象としていたため、他領域の研究や、他科の先生との交流も持つことができ、充実した期間を過ごしました。ラボの研究テーマの一つが唾液など体腔液に含まれる癌細胞を分子生物学的に検出することだったので、帰国後の研究の継続と臨床での早期癌診断の研究につながっています。
 頭頸部癌は早期発見が難しい癌といわれ、特に上、中、下咽頭癌は初診時にはすでに頸部などに転移を持つものが7割程度です。進行癌が多いため治療成績が悪く、またその解剖学的特徴から、手術、放射線治療によるQOLの低下は避けがたく重要な問題です。癌を早期発見して侵襲の少ない治療、特に縮小手術で癌を治すことは、患者さんにとって最も侵襲が少なく、これを第一の目標と考え、癌の早期発見をこれまでの統一したテーマとしてきました。基礎研究では唾液内に含まれる微量の癌細胞を遺伝子不安定性やメチル化を指標として検出する方法を研究しました。臨床では消化器外科の先生と協力し、NBI内視鏡を用いた中下咽頭癌の早期発見や低侵襲手術をすすめています。
 また頭頸部腫瘍センターは頭頸部腫瘍患者の診療を耳鼻咽喉科や口腔外科といった診療科枠を越えて、複数の診療科、職種で協力して、診療に携わるというコンセプトで立ち上げられました。多診療科で合同のカンファレンスや手術交流により、患者さんにとってよりよい診療を行うことが第一と考えます。若手の先生方へ手術技術を伝承し、よい頭頸部外科医を育成することが自分の責務と考えます。今回の人事はこれまで東海大学で教えていただいたこと、学んだことに対して、恩返しの機会を与えていただいたものと考えています。星医会の先生方には、今後ともよろしくご指導、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。


教授に昇格して
専門診療学系耳鼻咽喉科学 教授 田村 悦代

 2009年4月1日付けで、東海大学医学部専門診療学系耳鼻咽喉科学専任教授を拝命いたしました。これもひとえに、2003年着任後6年間にわたる本学の諸先生から賜ったご指導とご鞭撻、そしてご厚情の賜物と、深く感謝いたしますとともに、星医会会員の先生方にご挨拶申し上げます。
 私は、1979年に埼玉医科大学を卒業後、慶応義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室に入局し、日本における音声外科の祖といわれる故斉藤茂司教授のもとで、喉頭科学、気管食道科学、頭頸部外科学を中心に研修と研究をさせていただきました。1985年学位を取得したのち、1990年からは、防衛医科大学校耳鼻咽喉科学講座に勤務いたしました。その後、2003年より本学専門診療学系耳鼻咽喉科に勤務させていただいております。勤務地は諸般の事情により東京病院を希望いたしましたが、勤務しておりました半分の期間は一人体制という変則的な状況ではありました。しかし、2回/月、東京においでになる幕内博康外科学教授に頭頸部領域の超早期がんの検査や治療をご指導頂く機会に恵まれました。また、伊勢原では、飯田政弘教授のご支援とご指導のもとで、特殊外来としての喉頭外来や以前から続けておりました喉頭科学の基礎実験を継続させていただいております。また、昨年度まで勤務しておりました東京病院では、病院長の桑平一郎教授に、温かいご指導をいただきました。このように、多くの方々との出会いに恵まれましたことに改めて御礼を申し上げたく存じます。もちろん、この間、恩師である故斎藤茂司教授に導かれた喉頭科学への興味は尽きることなく、「よい声とは」の命題を追求し続けてきたわけですが、若輩ものの私の業績など塵のようなものです。ですから、これからの、若い世代の方々に伝えたいこと、それは、「出会いを大切にしてほしい」ということ、これは、「ヒト」だけでなく「モノ」や「興味をもったこと」など何でもです。
 今後も、微力ながら、ご厚情をたまわりました方々へのご恩にお応えできますよう、飯田政弘教授のもと、大上研二教授や教室の先生方とともに、本学耳鼻咽喉科学教室、ひいては医学部の発展に精進いたしたく存じます。
 また、4月より勤務いたしております、八王子病院におきましても、北川泰久病院長のもと、後進の育成はもとより、東海大学4病院の一翼を担うとともに、地域における中核病院の耳鼻咽喉科として、診療に努力いたす所存でございます。今後とも、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。



▲ページのトップへ




腎代謝内科教授就任にあたって
内科学系腎・代謝内科学 教授 深川 雅史

 2009年7月1日付けで東海大学内科学系腎代謝内科教授を拝命いたしました深川雅史です。就任にあたりまして、星医会の会員の皆様に、一言ご挨拶申し上げます。
 毎日の飲食がどんなに多くても、少なくても、何もおかしなことが起こらないのは、どうしてだか考えたことがありますか?それは腎臓がバックグラウンドで働いているからなのですが、腎臓はこのように広いダイナミックレンジの変化に対応する構造と機能をもち、内分泌系を中心とする制御系で精密にコントロールされています。
 この腎臓と内分泌系には、学生のころから興味があったのですが、その後にこの分野を専攻することを決めたのは、医師として、教育者として、研究者として、それぞれとてもすばらしい指導者や同僚たちと出会ったことが大きく影響していることは言うまでもありません。そして、今では、診療や研究に関しても、内科のほかの分野の知識と技量も常に維持することができる(実際には、常に努力してアップデートしていかないといけないのですが)この分野を選んで良かったと思っています。
 さて、大学病院は、医療施設であると同時に医育機関であるという特徴を有しています。以前在籍したいくつかの施設での経験でも感じたことですが、医育機関としての評価は、良い人材を輩出したかで評価されるべきだと思います。もちろん患者の数、集まる研修医の数、論文の数など目に見える数字を増やすことは大切です。しかし、結局は外の人から見て、あそこで修行した人はとても優秀であるという評価が一番確実なのだと思います。
 一方、大学ほど、各分野の中に、より細かい領域に精通した専門家がたくさんいる医療施設はないでしょう。だからこそ勉強になるとみんな思っているわけです。専門分野を追求することは、特に研究者にとってはすばらしいことですが、臨床医としては大きな落とし穴もあります。つまり、細かい領域の専門家になって、もともとの分野の進歩にすらついていけなくなる可能性があるということです。たとえば、腎臓でいえば、腎炎は診るが透析は診ない、もしくはその逆、電解質異常や急性腎障害への対応ができない、さらに慢性腎臓病の原因となる糖尿病や膠原病のことはわからない、一方糖尿病を専攻していても腎症が進むと手に負えない、というのは本来許されないはずなのです。
 私は常々、専門家の価値は敷居を高くして守られるものではなく、裾野を広くしてこそ相対的に上がるものだと考えてきました。したがって、この伝統ある部門で若い人を育てるにあたっては、まず内科医としてきちんとできること、次に専攻する分野に関しては一通りすべてが出来ることを目指してほしいと思います。もちろんその上で、さらに興味のある領域を追求することには支援を惜しまないつもりです。
 このことは、学生や初期研修医の教育にもあてはまることではないでしょうか?最近「慢性腎臓病(CKD)」という言葉をよく聞くようになったのは、腎臓に問題のある人が心血管系のリスクが高いということだけでなく、高齢化が進むこともあって、どの科でも腎機能の低下した患者さんを診る可能性があるということなのです。したがって、学生や初期研修医には、患者さんの腎臓の機能に問題があることを確実に認識し、やるべきこと、やってはいけないことを十分理解できるようなカリキュラムにしたいと考えています。
以上のことをふまえて、微力ながら頑張って行きたいと思います。
今後とも、どうぞご支援、ご指導よろしくお願いいたします。


消化器外科学教授に就任して
専外科学系消化器外科学 教授 小澤 壯治

 2009年7月1日付けで東海大学医学部医学科外科学系消化器外科学教授を拝命いたしました。歴史と伝統のある本学医学部の一員として勤務できる機会を与えていただき多くの方々に感謝しております。
 本学消化器外科は幕内博康教授、生越喬二教授、貞廣荘太郎教授、安田聖栄教授がそれぞれの専門分野でご活躍なされ、本邦でもトップクラスの評判を得ております。
 2005年11月に竣工した新病院はどれをみても私がこれまでに経験したことがない最新設備であり感激しています。この素晴らしいハードウエアに加えて、夜遅くまで勤務する消化器外科医局員の臨床に捧げる熱心さにも、思わず興奮を覚える次第です。
 2005年12月に慶應義塾大学から藤田保健衛生大学医学部外科講座に教授として赴任し、中規模教室の運営に携わってきました。消化器疾患、乳腺疾患、末梢血管疾患など幅広い疾患を扱う教室の運営を経験し、また私立大学医学部の抱える問題や病院経営の難しさも同時に勉強させていただきました。3年7か月後に赴任しました本学では、消化器外科学が分野として独立しているため、消化器外科に専念して力を発揮したいと思います。
 以下に私の抱負を述べさせていただきます。診療面では、第1に本学消化器外科の高い診療レベルを少しでも向上させることに腐心したいと思います。そのためには、臓器別の各専門分野が診療を充実させるのみならず、他の診療科医師や病院職員との円滑かつ強固な連携を構築することも大切にしていきます。第2に近隣の開業医や遠方の先生方から、引き続き多くの患者をご紹介いただけるように、一方で常に患者が安心して受診できるよう、質の高い外科治療を提供し、信頼維持に努めます。第3に在院日数の短縮、病床稼働率の向上、手術件数の増加など病院経営にも協力させていただきたく存じます。
 臨床研究では、第1に消化器疾患に対する低侵襲手術法を確立いたします。手術手技は機器の進歩と共に無限に改良される可能性があります。新しい手術手技の考案、手術適応の検討、手術成績の評価などを経て、日本のトップクラスの位置を維持したいと思います。第2は集学的治療を中心とした、各疾患治療の臨床試験の発信地となることです。本学が中心となる臨床試験を企画・実施して、治療学の発展に貢献したいと思います。第3に本邦導入初期より実務担当者として携わってまいりました手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」の導入を計画し、先進的な低侵襲手術の普及を目指します。基礎研究では、第1に癌の新しい分子診断や治療の研究を行います。手術や内視鏡検査などで得られる組織や血液を材料として、手術、化学療法、放射線療法などを効果的に組み合わせることに役立つ新しい診断手法と治療法の開発研究を進めます。第2は手術支援ロボットの研究開発です。以前より触覚技術を付加したマスタ・スレーブ・マニピュレータ型の手術支援ロボットの開発研究を慶應義塾大学理工学部と共同で行っており、実用化を目指します。
 教育面では、本学の教育理念である文理融合を尊重し、高度な専門性に加え、幅広い教養と見識、そして柔軟な発想力を持つ医師の養成を目指します。学生から研修医、臨床助手に至る連続的な一貫した教育を心がけたいと考えます。消化器外科学については、動物を用いた手術実習の機会を希望者に与え、さらに、最近進歩している内視鏡下手術の実習も加えて、テレビゲーム時代の若者に高度先進手術の面白さを体感してもらうことも企画いたします。
 消化器外科学教授職は、若輩で微力な私には身に余る重責かつ大任ではありますが、教室員とともに先達により築かれました伝統を継承し、教室ならびに本学の発展と、外科学のさらなる進歩のために誠心誠意、全力をつくす所存です。今後とも星医會の先生方の一層のご指導ご鞭撻を賜りますよう謹んでお願い申し上げます。



▲ページのトップへ




小児科学教授に就任して
専門診療学系小児科学 教授 望月 博之

 平成21年7月1日付けで、東海大学専門診療学系小児科学教授を拝命いたしました。就任にあたり、星医会の皆様方に、一言、ご挨拶申し上げます。
 私は1981年(昭和56年)に群馬大学医学部を卒業後、母校の小児科学教室に入局いたしました。県内外の関連病院で広く小児科学を教えて頂き、1989年(平成元年)から2年間、アメリカ合衆国カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校で呼吸生理学を学びました。専門は小児の呼吸器・アレルギー学ですが、長くおりました群馬大学は、臨床面でも研究面でも、小児科全域にボーダーレスに臨ませて頂きました。
 我が国の小児科を巡る最近の動向として、誠に残念なことではありますが、小児科医を目指す研修医がほとんどの地域で減少していることが取りざたされております。小児科が各地域の病院を引き揚げるとか撤退するというニュースは途切れることがないようで、最近は患者さんの親御さんから、いたわりの言葉を頂くまでになっています。小児の医療の現状を考えるに、この深刻な事態は、短期間で好転するとは思えません。少子化の時代ではありますが、小児救急や新生児関連の患者数は減少しないでしょうし、研修医の間に、小児科の業務について、ことさらマイナスのイメージが先行しているようにも思われます。
 小児科医は小児の疾病の治療にあたり、患者さんと患者さんのその家族と苦楽を共にするわけですが、もの言えぬ患者さんが多いこともあり、小児科医の立ち位置は、より患者さんに近いところにあるのではと思っています。それゆえの、小児科医ならではの臨床の充実感を、是非、若い世代に理解していただきたいと考えています。
 現状の小児医療のレベルを落とすことなく、若手医師の教育を円滑にできればと思いますので、これにはまず、マンパワーを充実させることが第一であり、私の最初の使命ではないかと考えています。しかるに現在、絶滅危惧種のトキでさえ、佐渡島で100羽を超えていると聞きますが、北関東の各県の小児科の勤務医数はそれよりはるかに下回っているのが現状です。全国的に減少している小児科医をいかに確保するかを考えますに、米百俵のたとえを出すまでもなく、やはり、一時しのぎではいけないと感じています。いかに小児科の診療が充実しているものであるか、小児科学が興味深いものかを、まず本学の学生に理解していただき、ゆっくりではあっても確実な前進を図るべきと思います。マンパワーが充足して初めて、地域医療を含めた診療、教育、基礎と臨床の研究の3つのバランスが取れると思います。
 幸い、東海大学には優れた教育システムがあります。さらに、現在すでに、小児科には各分野の優秀なスタッフがそろっております。小児科の守備範囲は幅広いため、どうしても力が分散し、地味な科との印象を与えてしまいがちですが、これからは、東海大学小児科のアドバンテージを前面に押し出し、広く理解していただけるよう努めたいと思っています。星医会の皆様方には、引き続き、暖かいご支援、ご指導をお願いしたく存じます。
 末筆になりましたが、星医会の会員の皆様方のご健勝と星医会の一層のご発展を祈念して、ご挨拶とさせていただきます。


八王子病院眼科教授就任に際して
専門診療学系眼科学 教授 鈴木 康之

 平成21年7月1日付けで、東海大学医学部付属八王子病院眼科教授を拝命いたしました鈴木康之と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。就任にあたりまして河合憲司眼科学教室主任教授には大変お世話になりました。どうもありがとうございました。
 私は昭和61年に東京大学医学部医学科を卒業後、同大学医学部眼科学教室に入局し、3年後より関東逓信病院(現NTT東日本関東病院)で臨床経験を積みながら眼科学に関する研究を続けて学位を取得し、その後、東京都職員共済組合青山病院に少しの間在籍した後、米国Yale大学のDepartment of Ophthalmology and Visual Science教室に2年間留学して房水産生に関する研究を致しました。帰国後は日本医科大学眼科学教室に1年半在籍させていただき、その後、母校である東京大学に戻りまして、5年間講師として診療・研究ならびに教育を行いました。さらに平成15年には帝京大学医学部附属市原病院に教授および科長として赴任し、眼科一般臨床に従事し、平成17年に東京都板橋区の帝京大学医学部附属病院に移って眼科学講座教授として仕事を致しました。そして今回、東海大学にお世話になることになりました。
 大学卒業以来、一貫して眼科学の分野に携わってきまして、臨床分野では緑内障を中心に研究し、また基礎分野では網膜血流を中心に研究をして参りました。学位はレーザースペックル減少を応用した網膜血管内血流測定法についての研究で平成6年に東京大学より授与頂きました。臨床面においては緑内障の新しい診断法や治療法の研究並びにその病因・病態生理等について国内・海外を含めて多くの研究・発表を行ってきました。
 私の専門とする緑内障は高眼圧をはじめとするさまざまな要因により視神経乳頭の部分において網膜神経線維が障害され網膜からの視覚信号が外側膝状体に到達できなくなり、結果として視野狭窄ならびに視覚障害を来す疾患で、疫学調査によれば40才以上の20人に1人が罹患しているとされている病気です。本疾患の視神経障害は基本的に不可逆的であり、また継続的に進行していく疾患であるため、一度診断されると生涯にわたって治療並びに経過観察を受けなければならない厄介な病気です。現在、八王子市には55万人以上の方々が住んでいるとのことですし、近隣の日野市や昭島市さらには中央自動車道沿線の人口を含めれば、かなりの数の緑内障患者さんがいらっしゃると思います。それらの患者さんが薬物治療では緑内障進行が止められないような状態になった場合には直ちに対応できるような体制を作り、地域の緑内障医療のレベル向上に努めていきたいと思っています。
 また、高度な診断治療、手術的治療を必要とする眼科疾患は緑内障だけではもちろんありません。白内障手術に関しても近年では乱視矯正やマルチフォーカル眼内レンズなど、手術により高度な技術が要求されるようになってきており、また網膜剥離や糖尿病網膜症、黄斑円孔、黄斑前膜などの網膜硝子体の分野でも、新たな手術器具や照明器具、25G手術システムや23G手術システムの導入など基幹病院に要求される水準はどんどん高くなってきております。これらの期待に応えるべく優秀な医局員たちとともに今後、八王子病院眼科をさらに発展させていきたいと思っております。
 星医会の先生方には、ますますのご協力とご指導・ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。




▲ページのトップへ
←会報のページへ戻る