星医会 東海大学医学部同窓会
 
 会報(第43号)
 〜平成22年9月1日発行〜


新任教授紹介

消化器外科(肝胆膵)教授に就任して
外科学系消化器外科学 教授 中郡 聡夫

 この度、2010年1月1日付けにて東海大学医学部消化器外科(肝胆膵)教授を拝命いたしました。就任にあたりまして、星医会会員の皆様に一言ご挨拶申し上げます。
 私は1983年3月に千葉大学を卒業し、同年千葉大学第2外科(現先端応用外科)に入局しました。その後、千葉大学医学部附属病院第2外科で10年、第2外科の関連施設である熊谷総合病院で5年、船橋市立医療センターで1年、1999年からは国立がんセンター東病院上腹部外科で約11年消化器外科医として勤務しました。1991年には、肝臓のエネルギー代謝をMR装置で測定する研究で学位を取得いたしました。学位の研究を始めた頃から、臨床面でも肝臓・胆道・膵臓外科に興味を持つようになりました。中でも、私が特に興味を持って診療に当たってきた疾患が、膵がん、膵管内乳頭粘液腫瘍、肝内胆管がんです。そこでこれらの疾患についてご紹介したいと思います。
 膵がんは、消化器がんの中で最も治療成績の不良ながんです。診断時既に切除不可能な進行がんが80%以上と多い上に、切除可能でも5年生存率は10-20%と極めて不良です。膵がんに対する最も代表的な手術である膵頭十二指腸切除術は、消化器外科手術の中でも極めて難易度の高い手術です。また、抗がん剤があまり効かないことも膵がんの特徴です。日本では2001年から膵がんに対してゲムシタビンという抗がん剤が使用されていますが、その奏効率は僅か5-10%程度であり、とても満足すべき数字とはいえません。しかも2001年以降ゲムシタビンを越える有効な抗がん剤は現れていません。このように診断・外科治療・化学療法いずれも困難である膵がんの治療成績を、手術の安全性をより高めると共に、さらに有効な補助療法の開発により少しでも改善したいと考えています。
 膵管内乳頭粘液腫瘍は比較的予後の良好な膵疾患です。この疾患には、良性腺腫から浸潤がんまで様々な進行度のものが含まれます。また同一病変内にも腺腫、非浸潤がん、浸潤がんがしばしば共存しています。大雑把にいいますと、切除例の1/3が腺腫、1/3が良悪性境界病変(ボーダーライン)または非浸潤がん、そして1/3が浸潤がんです。腺腫・良悪性境界病変・非浸潤がんの予後は非常に良好です。しかし、浸潤がんは、切除後の予後がかなり不良で、進行度を揃えると膵がんとほとんど変わりません。幸い進行度の早い浸潤がんが多いので浸潤がんの5年生存率は40〜50%と膵がんの5年生存率よりはかなり良好です。最近この疾患が非常に増加していますので、消化器内科・放射線科と協力して進行度を正確に診断した上で治療していきたいと思います。
 肝内胆管がんも膵がん同様極めて予後の不良な疾患です。治療の基本は、拡大肝切除と胆管・門脈などの合併切除術です。肝門部へ浸潤する肝内胆管がんの外科治療は極めて困難ですが、これまでの国立がんセンター東病院での臨床経験と3次元画像診断によってがんの胆管・門脈等への進展範囲を正確に診断することによって安全に手術可能になると考えています。
 これ以外にも、胆管がん・胆嚢がん・乳頭部がん・肝細胞がんなどに対して積極的に取り組んでいく所存ですので、今後とも星医会会員の皆様のご指導・ご助力をお願い申し上げます。

【略歴】 
 1977年 埼玉県立浦和高等学校卒業
 1983年 千葉大学医学部卒業
 1983年 千葉大学医学部附属病院第2外科医員・研修医
 1984年 埼玉県厚生連熊谷総合病院外科医師
 1985年 船橋市立医療センター外科医師
 1986年 千葉大学医学部附属病院救急部・集中治療部医員
 1987年 千葉大学医学部附属病院第2外科医員
 1989年 埼玉県厚生連熊谷総合病院外科副医長
 1991年 学位取得(千葉大学)
 1994年 千葉大学医学部附属病院第2外科助手
 1998年 ハーバード大学医学部ブリガム&ウィメンズ病院放射線科研究員
 1999年 国立がんセンター東病院 上腹部外科医師
 2002年 国立がんセンター東病院 上腹部外科医長
 2010年 東海大学医学部消化器外科教授


教授に就任して
専門診療学系放射線治療科学 教授 國枝 悦夫

大泉幸雄教授のご推薦により、高精度放射線治療を担当するために、この1月より東海大学放射線治療科に奉職させて頂きました。私は当初は核医学もやっていましたが、スタンフォード大学のmedical computer science部門に放射線治療計画の最適化という、今でいうIMRT的なことで留学し、放射線治療に本格的に関わることになりました。たまたまですが、当時、サイバーナイフというその後世に広まる新装置を開発していました。いわゆるシリコンバレーの中心であり、広いキャンパスとその周りに医学部、工学部から、文系、芸術まですべての学部があり、他学部や周囲のハイテク企業の人たちとの交流が盛んで、このような研究面では無類の環境です。スタンフォード大学は医療用ライナックをつくったところで、現在も最大手のVarian社の本社、工場は大学構内にあります。
 さて、抱負ですが、診療面では、IMRTを推進していきたいと思います。IMRTはIntensity Modulated Radio-Therapyの略で日本語では強度変調放射線治療といいます。
 腫瘍やリンパ節領域や、また守るべき正常臓器にそれぞれ目標とする線量を設定するとコンピュータが自動的に最適化して細かいビームを部位ごとに強度を変えながら照射して任意の線量分布を得るという「夢」の治療です。今年から全面的に保険採用されたとはいえ日本では普及は遅いですが、欧米ではほとんどの施設でできる「標準治療」となってしまいました。
 IMRTに限らず、複雑化した放射線治療では、個々の技術だけでなく全体のシステムが間違えなく、かつ効率的に動くことが重要です。技師、看護師、また事務の方々と話し合い、より良い放射線治療の体制を作り上げていきたいと思います。例えていえば、今の放射線治療はジャンボ機や新鋭客船の運航のようなものです。自動化は進みましたが船長、機長だけでエンジンを始動して動かせるせるものではなく、整備士や航海士、また客室乗務員がそれぞれ責任をもって各職務を尽くさなければ正常運行はできません。
 各職種が切磋琢磨して技術力を高め、その上で疾患事に中心となる医師が深い知識と明確な目的意識をもって、オーケストラの指揮者のように各パートが最高の能力を発揮できるように全体をまとめ上げ、目的に添ってしっかり指揮するのが理想です。その点で東海大は医師だけでなく、関係するコメディカルのレベルが驚くほど高く、装置増設を含め諸条件が整えば飛躍的に伸びるものと思っています。
 教育面では、医学部の学生教育はもちろんですが、東海大学は、理学部、工学部原子力工学などもある総合大学ですので、学部間共同での研究体制、医学物理士などの大学院での教育体制も作っていきたいと思います。
 医学物理士(Medical Physicist)は、日本には少ないですが、欧米では放射線腫瘍医と同程度いるといわれ、高度な知識、最新の情報を駆使して放射線治療計画や安全面にあたるPh.D.クラスの専門家です。残念ながらIMRTの導入などで日本の放射線治療は欧米に10年遅れてしまいました。日本人は器用ですから、それまでは医師と技師でやり繰りしてきましたが、高度、かつ最新の放射線物理、技術やコンピュータの知識を必要とするIMRT導入では職種として物理士がいないために決定的な遅れをとってしまいました。実はIMRTやX線CTの基となったのは日本の技術なのですが、物理士のいない中で対応、発展ができず、今になって逆輸入されています。教員としての物理士を確立して、大学として高度な治療、新たな治療の開発、導入にあたる人材を養成して行くべきですし、また全国的に逼迫の需要があります。がん患者の中で放射線治療を受ける割合は欧米で65%、日本では急激の増加しているところですが25%といわれています。国も問題は理解して、特に物理士相当を必要とする治療の保険点数上での優遇などの政策がとられています。
 なお、一見、物理士が技師職務と重複、競合するようにも見えますが、そうではなくこれまで欠けていた部分を補うものですし、現在の技師からも大学院で勉強するなどもして専任物理士が多数出て欲しいと思います。
 研究面では医師だけでなく、技術部門でも最新の研究を進めて、協力して東海大発の技術、新装置を開発していきたいと思います。大泉先生やスタッフの方々と供に東海大学の伝統の上にこれまで以上に発展させ、日本でもトップクラスの放射線治療施設にしていくべく努力しますのでご支援の程お願い申し上げます。

【略歴】国枝 悦夫(くにえだ えつお) 
昭和56年  慶應大学医学部卒業
昭和56年  慶應大学医学部研修医(放射線科学)
昭和58年  慶應大学医学部助手(放射線科学)
昭和59年  栃木県済生会宇都宮病院医員
昭和63年  Stanford大学visiting fellow
平成2年   川崎市立川崎病院放射線科副医長
平成9年   慶應義塾大学医学部専任講師(放射線科学)
平成22年1月より東海大学医学部専門診療系放射線治療学教授


口腔外科学教授に就任して
外科学系口腔外科学 教授 坂本 春生

平成22年4月から外科学系口腔外科学の教授を拝命しました坂本春生です。東海大学医学部には前期研修医として入職し、以後東海大学をベースにして活動を行っています。現在は八王子病院口腔外科の医長を兼任しております。私の卒業年度は、東海大学の一期生と同じ1980年でありました。初の東海大学医学部卒業生である一期生の方々はのびのび自由に育てられていて、また個性的な方が多くびっくりしました。研修医の生活は大変に楽しく、多くの友人を得ることができました。当時は各科対抗の野球大会などがあり、のんびりした時代でした。
 私の専門は口腔外科ですが、特に外科感染症学を研究の中心としております。この世界に興味を持つきっかけは留学時代に見たさまざまな経験があります。1991年にストックホルムのカロリンスカ研究所のclinical bacteriologyに佐々木次郎教授のご配慮で留学をする機会をいただきました。Nord教授のもと、私自身は定量的な血液培養や下顎の血行性骨髄炎モデルなどを作製しておりました。当時はPCRの出始めの時代でしたが、Nord教授は抗菌薬による腸内細菌の変動という非常に地味な仕事をたゆまず繰り返していました。このようなところは、ヨーロッパの研究者の侮りがたいところで、最先端をキャッチアップするとともに時代遅れともいうべき地味な仕事を継続できる懐の深さがあります。私は「玉拾いのような研究」と呼んでおりました。みんなが玉入れ競技に躍起になっているときに、こぼれた玉を集めて回っているような印象があったからですが、このような研究も十分に世界的な研究となることを学び、研究は臨床でもアイデアさえあればどこでも可能であると以後考えるようになりました。その後、私の研究は口腔がんにおけるバクテリアルトランスロケーションや抗菌薬の予防投与、術後感染、重症感染症の免疫学的研究などへと発展していくことになります。
 八王子病院には2002年開院と同時に赴任しました。以後8年、松崎院長から北川院長、そして今年度からは幕内総院長においでいただき、八王子病院は発展期を迎えようとしています。念願の放射線治療も開始できるめどが立ち、口腔がん治療を行う体制が整いました。八王子病院口腔外科では、初診患者の紹介率は70%近くまで上がり、院内第一位の紹介患者数を誇っております。私どもは、がん治療とともにインプラント治療、顎関節疾患、感染症などに対しても日本のトップレベルであると考えており、幸いそのような評価をいただいております。これも患者様をご紹介いただく先生方のおかげと心から感謝しております。今後ともたゆまず前進する所存ですが、星医会の先生方のご支援を今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

【略歴】坂本 春生(さかもと はるお) 静岡県出身
1980年3月 東京歯科大学卒
1980年4月 東海大学医学部 研修医
1985年4月 東海大学医学部 助手
1988年4月 足利赤十字病院 口腔外科 部長
1991年4月 王立カロリンスカ研究所 客員研究員
1993年4月 総合磐城共立病院 口腔外科 科長
1998年4月 東海大学医学部 講師
2000年4月 東海大学医学部 助教授
2002年3月 東海大学医学部付属八王子病院 歯科・口腔外科 医長 
2010年4月 東海大学医学部外科学系口腔外科学 教授

【学会活動】
日本化学療法学会 評議員 編集委員、日本感染症学会 評議員、日本歯科薬物療法学会 評議員、 日本外科感染症学会 評議員 編集査読委員、日本口腔感染症学会 理事、日本臨床腸内微生物学会 理事、日本嫌気性菌感染症研究会 運営委員、カロリンスカ研究所 visiting scientist、ほか 

【資格】
日本口腔外科学会専門医、ICD(日本感染症学会)

【専門】
口腔重症感染症の診断治療、口腔腫瘍の診断治療、インプラントによる再建




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